立体最小限 要望最大限 住居
T11 private residence
市街地にある間口が狭く奥行の長いうなぎの寝床と呼ばれる敷地。 こういう特徴のある敷地は計画する上で重要な足掛りとなる。 しかし今回は、様々な条件から奥行を活かしきれない。 施主の要望は、螺旋階段・吹抜・トップライト・広い浴室に洋バス・個室・ロフト・玄関に手洗・人の集まれる部屋などなど。 こういう希望は限られた予算内での計画では足枷せ※1となる。しかし今回はこの希(かすか)な望みを全てかなえたい。そんな想いで始まった。

条件からある程度ヴォリュームが決まり、要望をひとつひとつ落し込んでいく。人の集まれる部屋のイメージは当初から持っていた。玄関に手洗と螺旋階段を設け土間のまま便所、脱衣室へとつなぐ。脱衣室と浴室はガラスで仕切り仕上げを統一し一体と見せて洋バスを置く。階段を昇った所は、吹抜としトップライトを設け1階まで光を注ぐ。階段を隔てた個室には、それぞれにロフトを設けている。これでヴォリューム内ぎゅうぎゅうに押し込めて建築面積8坪である。人の集まる部屋は、階段をフタすることで14帖半のワンルームとし、解決させる。隣地が両親宅であることからダイニングキッチンには両親の庭に向けて大きな窓でつながりを持たせることも出来、天気の良い日にはココにも人が集うことが出来る。これで最大限7.5坪である。

という第一案が受け入れられた所で工期が急激に縮まることになった。

実施設計と見積りを同時進行させ詳細を詰めていく。ある程度の目処が立ち確認申請そして着工。これは施主が信用し、施主・設計・工務店の信頼関係が無ければ行うことが出来ないことである。なんとか予算内そして引越しにも間に合った。工期も適正に行えるように仕上・寸法・施工方法などを考え、厳しい予算の中でも屋根・外壁通気、無垢自然素材の使用など性能も高めている。(長井)                       ※1 言葉のアヤ

Photo FUTOSHI MURAKAMI